このたびのフィリピン旅行は私史上最低の旅になってしまった次第であるが、とはいっても、これからフィリピンに行こうかと考えている人にとっては役立つかもしれない体験談を提供できそうなので、書きつづってみる。

※本稿の情報は2017年11月上中旬現在のもの。

いきなり厄介なNAIA

飛行機の乗り降りや乗り継ぎというのは、だいたいどこの国のどこの空港でも似たようなものだから、一度か二度でも経験すれば勝手は分かるようになるものだろう。ところが、マニラのニノイ・アキノ国際空港(NAIA)は、おおよそ“首都の国際空港の常識”が当てはまらない、非常識すぎる空港なのである。

NAIAの地図。拡大図はこちら

まずはNAIAの地図を見てみよう。2本の滑走路がy字に敷かれ、その周辺にターミナルが4つ散在している。

  • ターミナル1(T1): 赤で表示。地図の左下。
  • ターミナル2(T2): オレンジ色で表示。地図の中央よりやや下。
  • ターミナル3(T3): 緑で表示。地図の中央よりやや上。
  • ターミナル4(T4): 青で表示。地図の左上。

大きな空港にターミナルが複数棟あるのは普通のことだが、NAIAの場合、普通ならあり得ない致命的な問題がある。何と、これら4つのターミナルはつながっていないのだ。行き来できないのである。

例えばあなたが、到着がT2(オレンジ)で出発がT3(緑)という乗り継ぎをする場合を想定してみよう。地図を見ての通り、T2とT3は直線距離ではそれほど離れていない。大して時間もかけずに移動できそうだ、とあなたは考えるかもしれないが、そういう常識はNAIAでは通用しない。T2とT3の間にある滑走路の下をくぐる連絡路などないのである。

どうしたらいいのかと空港職員に尋ねたあなたは、こう説明されるだろう:「T2からいったん空港敷地外に出て、外の道路でぐるりと滑走路の北端を回り、T3へ向かわなければなりません。一応、無料シャトルバスが走ってはいますが、運行間隔が20分おきだったり1時間待ちだったりします。急いでいるならぼったくりタクシーに乗るという手もありますが、大枚をはたいて急いだところで空港周辺の道路は鬼の渋滞です。所要時間は、そうですねぇ、外の道路状況によりますが、30分から1時間半ってところでしょうか」─。

例外的に、フィリピン航空がT2とT3をつなぐ構内シャトルバスを運行していて、同航空の乗り継ぎ客だけはそれが使えるそうだが、どのくらいの頻度で走っているのかは知らない。

従って基本的には、NAIAで乗り継ぐなら、到着便と乗り継ぎ便が同じターミナルになるよう慎重に計画する必要がある。もしくは、同日中の乗り継ぎをしないとか、いっそマニラを避けてセブ乗り継ぎにするなど別ルートを考えるとかしたほうがいいかもしれない。

──ほらね、もうフィリピンに行くのが嫌になってきただろう(笑)

フィリピンの地方都市へ行くなら全日空

実は3年前に全日空(NH)がフィリピン航空(PR)と提携していて、おかげでフィリピンの主要地方都市に行くなら全日空を使うのが便利ということになっている。

今回の私の旅でいえば、羽田─マニラを全日空、マニラ─プエルトプリンセサをフィリピン航空運行の全日空コードシェア便にすると、全日空扱いの一枚つづりで羽田─マニラ─プエルトプリンセサの往復を確保できるのだ。しかも、フィリピン航空の一枚つづりよりも安いという驚きの料金である。全日空はT3発着だし、フィリピン航空のプエルトプリンセサ便もT3発着なので、乗り継ぎでターミナル移動の刑に遭うこともない。

また、乗継便についてはスルーチェックインが可能になるため、乗継必要時間が短縮。
[同]

夢のような便利さではないか。「スルーチェックイン」ということだから、文字通りに解釈すれば、羽田の全日空カウンターでチェックインした時に羽田─マニラ─プエルトプリンセサの搭乗券を受け取ることができ、預けた荷物はそのまま最終目的地プエルトプリンセサまでそのまま運んでもらえる、ということになる。

──本当かぁ?

国際線の預け入れ荷物は、到着国のどこかで税関を通さなければならないに決まっている。マニラで税関を通さないのだとすれば、プエルトプリンセサでやるのだろうか。例えばタイはそういうことができるシステムを整えているけれど、フィリピンでもできるのかどうかというと疑問だ。検索してみたが、その点についての情報はろくに見つからない。

ということは──これは自分で体験してみるしかなさそうである(笑)

往路は便利といえば便利だが不便な部分も

往路の旅程は──

  • 羽田→マニラ NH869 11月9日 09:35発 13:35着
  • マニラ→プエルトプリンセサ PR2787 (NH5275) 11月9日 17:10発 18:20着

羽田─マニラ─プエルトプリンセサのスルー・チェックインがオンラインで済んでいる状態で、9日朝に羽田の全日空手荷物優先カウンターへ。

預け入れ荷物を最終目的地までスルーにできるかどうか、係員が確認したところ、案の定、マニラでピックアップして税関を通してからフィリピン航空に預け直すようにとのこと。バゲージ・タグは〈マニラ乗り継ぎでプエルトプリンセサまで〉の表記のものが付けられる。搭乗券は、マニラまでのNH869と、プエルトプリンセサまでのPR2787の分、計2枚を渡される。

マニラNAIAのT3に着き、言われた通り荷物をピックアップし、税関を抜けたら出発ロビーへ。出発ロビーではチェックインのエリアに入る際にEチケットか搭乗券を見せなければいけないという面倒なしくみになっている。物騒な国・都市の空港だから仕方ないが。

T3のチェックイン・カウンターは国際線と国内線のエリアがはっきり分かれているわけではなく、そのくせ情報を映すモニタは国際線用と国内線用が別々にあったりして、ちょっと分かりにくい。ここでうっかり、羽田で渡された搭乗券なんかをそのへんの空港職員に見せてカウンターの場所を訊いたりしたため、券面のANAのロゴを一瞥して「全日空はあっち」とか言われてしまったので、「違う違う、フィリピン航空のプエルトプリンセサ行きなんです」と言わないといけなかった。面倒だ。

フィリピン航空のチェックイン・カウンターにたどり着き、羽田で渡されたPR2787の搭乗券を見せて、荷物を預け直したいと告げる。ここでの手続きにやたらと時間がかかる。はっきりいって普通にチェックインするよりもかなり長い。羽田で発行された全日空の搭乗券はここのシステムでは使えないからということで、フィリピン航空の搭乗券を発行し直し、荷物のタグも新たなものを付け直される。

──スルー・チェックインの意味、まるでなし。「乗継便についてはスルーチェックインが可能になるため、乗継必要時間が短縮」じゃなかったのかよ。

復路はちょっと不便

復路の旅程は──

  • プエルトプリンセサ→マニラ PR2788 (NH5274) 11月13日 18:50発 19:55着
  • マニラ→羽田 NH870 11月14日 14:50発 20:00着

まず、プエルトプリンセサからマニラのPR2788(NH5274)はコードシェア便につき全日空のシステムでのオンライン・チェックインができない。かといって、フィリピン航空のシステムでもできない(予約番号、Eチケット番号が全日空のものなので)。普通に空港へ行って昔ながらのやり方でチェックインするしかない。まあ、混雑している空港ではないのでかまわないのだが。

マニラから羽田のNH870はさすがに全日空のシステムでオンライン・チェックインできるだろう、と思いきや、そうもいかない。全日空のシステムは先行便のチェックインが済んでいなければオンライン・チェックインができない(しかも出発24時間前まで)ということになっているため、結局13日の夜になって「14日のNH870は空港でチェックインしてください」というメールがしれっと送られてくる。帰路マニラでのチェックインは、カウンターに並んでまるまる30分待たされ、20年前の空港の光景を思い出した。

いろいろあったけどやはり

こう見てくると何だかものすごく不便な感じがするかもしれないが、要はマニラでの手続きの部分だけが引っかかるにすぎない。総合的に考えると、やはり全日空の一枚つづりで取れるのはそれなりに便利といえよう。

国際線レッグもフィリピン航空にしてしまえば、普通に全旅程をフィリピン航空の通しにできるのでは、と考えるのが一般的な発想だろう。しかし、フィリピン航空の国際線はT2に発着するため、乗り継ぎの国内線が同じT2でない場合は、T3などへの面倒なターミナル移動を覚悟しなければならない。最終目的地がプエルトプリンセサである場合に関していえば、T3だけで乗り継ぎのできる全日空国際線とフィリピン航空国内線という組み合わせのほうが便利だ。しかもなぜか安いし。

──え、なに、えるしぃしぃ? 嫌だよ、5時間もあるフライトでLCCは勘弁してほしいわ。しかもあれだろ、フィリピン方面のLCCっていったら、機内をガンガンに冷やして毛布を有料で貸し出してくれるっていうあの黄《略》