今まで行った中で二度と行きたくない国はどこか、と訊かれれば即座に「フィリピン! フィリピンなんか二度と行くかボケ!」と答える私が、フィリピンに行ってきました(23年ぶり2度目)。9日に出発し、14日に帰国しました。

特にフィリピンに行きたかったというわけではありません。アイランドホッピングやシュノーケリングをしてみたくて、最初は夏に沖縄にでも行こうかと考えたのですが、いろいろ見て回るとフィリピンのパラワン島などの海があまりにもきれいだし、あれやこれやの費用を総合的に考えると沖縄より安上がりになりそうですし、パラワン島なら前にプエルトプリンセサに立ち寄ったことがあるので久しぶりに行ってみるのも悪くないかな、というぐらいに考えた次第です。

まあ、私が「フィリピンなんか二度と行くかボケ!」と言うときの「フィリピン」とは、実際には8割方マニラを指していて、1割がセブ、残り1割がその他もろもろの地域ですから、要はマニラをスルーすれば問題はなかろうという算段です。

なぜ私がそんなにマニラを嫌がるかというと、とにかく洒落にならないほど物騒で、人間は信用できないし、まるっきり気が休まらない街だからですよ。同じ東南アジアといってもバンコクやクアラルンプールとは全く違います。

従って、今回マニラは市街地には出ず、NAIA(ニノイ・アキノ国際空港)での飛行機の乗り継ぎだけで済ませました。帰りの乗り継ぎはやむを得ず1泊することになりましたが、泊まったのは、空港から通行するのに保安検査が必要な歩道橋を渡ってすぐのホテルです。

といっても、その空港というのがまた厄介なものでしてね。23年前(1994年)にフィリピンへ行った時、当のフィリピン人から「マニラの空港では気をつけろよ。職員が難癖をつけて金を要求してくることがある」と真顔で警告されたものですが、最近でもあまり事情は変わっていないみたいなのです。

そんなわけで、NAIA職員対策には神経をとがらせました。首からIDをさげていようが警察の制服を着ていようがなんだろうが、笑顔で近寄ってきて “Can I help you, sir?” なんて声をかけてくるような奴が一番信用できないのです、あの空港は。これは決して冗談ではなく真面目な話ですので、もし今後マニラへ行く用向きがありましたらぜひ思い出してください。そして、そんなふざけた空港であっても、あの街では最も安全なエリアだということも。

さて、前置きというか余談というか、そんな話が長くなりましたが、本題に移りましょう。

今回のパラワン島はプエルトプリンセサへの旅はどうだったかというと、一言でいって、大失敗でした。初日の強行日程がたたり、2日目から体を壊してしまい、楽しみにしていたアイランドホッピングもシュノーケリングも断腸の思いであきらめ、ようやく体調が回復したところでプエルトプリンセサをあとにすることとなりました。わざわざ持っていった水着も無駄。もしシュノーケルを自前で用意していたら、さらに悔しい思いをしていたでしょう。

プエルトプリンセサは、パラワン島でほぼ唯一の町らしい町で、島の観光の拠点となる所です。しかしながら、ちょっとググってみればすぐ分かるように、町自体に何か特別なものがあるかといえばそうでもなく、観光客にとってみればアクティビティの拠点という以外に何の意味もない、何の取り柄もない町です。こんな所へ来て、私は体を壊して肝心のアクティビティを断念するはめになったのですから、もうあとはなにもありません。

それでも昔のプエルトプリンセサなら、夜になれば虫の声を聞きながらサンミゲルが飲めるような、フィリピンの田舎町の味わいがあったものです。しかし、23年の年月はそんな世界をすっかり駆逐してしまいました。今やプエルトプリンセサは、夜遅くまでトライシクルの洪水がうるさくて空気の悪い、中途半端な地方都市にすぎません。外出すること自体が苦痛でしかないといっていいでしょう。私の記憶にあるプエルトプリンセサの風景は、もはやなにひとつ残っていませんでした。

そんなプエルトプリンセサから、あれほど嫌で嫌でたまらないはずのマニラへ戻ってきた時、ものすごくほっとしている自分がいて、とても不思議でした。

総括: 中高年になって、若い頃のような無理な旅ができると思うな。日程には気をつけよ。ほぼ徹夜に近い状態で家を出て、朝から晩までかけて飛行機を乗り継ぎ、気候風土の全く違う土地へ降り立てば、体を壊して当然と心得よ。

本来は今回の旅を最後にしばらく海外に出かけるのはやめるつもりでしたが、こういう結果になったからには挽回しないわけにはいきませんね。