新型コロナウイルス感染拡大について日本は欧米諸国に比べるとかなりマシな状況だ、といった感じで他国との比較で現状の良し悪しを判断するという悪趣味なことは、本来はあまりしたくありません。他国がどうであろうと、現に日本では感染が拡大しつつあり、東京などは医療も逼迫してギリギリの戦いの毎日なのですから、これを乗り越えなければなりません。

とはいえ、なぜか欧米に比べて日本がとても悪いかのように吹聴して回る、いわゆる出羽守にはうんざりしていますので、一度はっきり叩っ斬っておくことにしますよ。

前にも述べましたが、感染者数の単純比較というのはあまり意味がありません。検査の実施方法などは国によって異なるからです。日本の場合、医師が必要と判断した例以外は検査に回していないため、軽症者や無症状者を含む感染者の総実数を把握しているわけではありませんので、当然、感染者数は小さめに出ます。ただし、重症者や死者の数に関しては日本は制度的にごまかしようがない形になっているので、よほどの過失でもない限り検査漏れはないといえます(むしろ海外のほうがきちんと数えていないことが疑われます)。

従って、感染者数ではなく重症者数や死者数で比較するのが適切です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数(12日22時現在、ジョンズ・ホプキンズ大学のデータに基づく)
死者数 人口10万人当たりの死者数
日本 108人 約0.086人
ドイツ 2,871人 約3.453人

一応言っておきますが、最初の感染者が出たのは日本のほうがドイツよりも前です。

今回のネタがドイツなのでドイツだけを取り上げましたが、ドイツはまだいいほうで、アメリカ、イタリア、スペイン、フランス、イギリスなどはもっと悲惨な状況です。

先日、安倍首相が緊急事態宣言に関して記者会見を行った際、イタリア人とみられる記者が「失敗だったらどういうふうに責任をとりますか?」と質問し、首相は「私が責任を取ればいいというものではありません」と答えました。この答えについてあれこれ批判の声が上がっていたようですが、これはそもそも質問した記者のほうがおかしいのです。失敗した責任についてなら、まず自分の国の首相の責任を問えと言いたいですね。すでに2万人近くがCOVID-19で亡くなっている国の記者が、どの口で日本の首相にイチャモンをつけるのかという話ですよ。

「責任はすべて自分にある、と明言しているニューヨーク州知事とは大違いだ。安倍首相は無責任だ」などと言う人もいるようです。あのね、ニューヨーク州ではここのところ毎日700人以上が亡くなっているのですよ。日本でのこれまでの累計死者数の7倍が、毎日毎日たった一つの州だけで亡くなっているのです。同州知事がどう責任を取ったと言うのでしょうか。安倍首相も見習って毎日700人以上ずつ死なせてゆけと?

まあ、現時点で首相から「責任」の言質を取りたがっている人たちは、要するにこれから毎日「今日1人亡くなった。安倍は辞めろ」と言い続けたいだけなのでしょうし、もし本当に首相が辞めてしまったらそれはそれで「途中で辞めるとは無責任だ」と言うのでしょう。この危機を政局に利用したいだけで、危機を乗り越える上で何の役にも立たないどころか邪魔でしかない人たちです。

こういう非常時には人間の本性があらわになりますから、よく観察しておきましょう。安倍政権を倒すためなら日本が滅びてもいい、と思っている人たちがいるのです。これは冗談ではありませんよ。

もちろん、日本の状況がまだ欧米ほどに悪化していないとはいえ、このままいけば欧米と同じルートになってしまうおそれはあります。最悪の事態を避けるべく手を打ち続けなければなりません。けれどもその際に、対策に失敗している欧米を、失敗例として参考にするならまだしも、なぜ成功例のごとく手本にする必要があるのでしょうか。

ああ、そうそう、ヨーロッパの国同士も何かと大変なようです。アジア人たたきに続いてこんなことが──

世界で人類共通の敵と戦っている最中なのですから、狭いヨーロッパでいがみ合っている場合ではないでしょうに。いやぁ、こういう非常時には人間の本性があらわになりますな。

さて、私たちはせっせと手洗い励行でいきましょう。もちろん、マスクやソーシャル・ディスタンス(社交距離)も大事ですが、まずは手洗いです。乗り切りましょう。