ダライ・ラマ14世という人はやはりただ者ではない仏教者だと、改めて思わされる。

彼は、自分には仏教徒としての信仰と祈りがあると言い、しかし問題はそれでは解決しないと言う。そして最後にこう結ぶのである:

So let us work for peace within our families and society, and not expect help from God, Buddha or the governments.

だから、私たちの家族や社会において平和のために励もうではありませんか、神や仏あるいは政府の助けを期待しないで。

[同]

まるで初期経典の一節のような、鋭くも心地よい響きがある。

浄土真宗的にいえば、われわれは御仏に平和を祈るけれども、その祈りがわれわれの問題を解決することはなく、気づかされてみれば、逆に御仏からわれわれに平和が祈られている。そこに立った時、新たな歩みが始まるということであろう。

「天命に安んじて人事を尽くす」という清沢満之の言葉を改めて思うことである。