テクスト: 誉田哲也『ケモノの城』 東京、双葉社、2017年。初刊は同社、2004年。

〔2017年12月7日(木)読了〕

強烈な読後感を残してくれる小説は、優れた小説である。ただし「強烈な読後感」とは、必ずしも爽快なものとは限らない。感動の涙ではなく吐き気を催させる「強烈な読後感」もあるのだ。私はある程度、猟奇的なものに対する免疫はあるつもりだったが、この一冊はなかなか重かった。陰惨すぎる。

本作は描写があまりにも生々しいので、何を参考にしたのかと思いきや、描かれている事件にはモデルがあるという。2002年に発覚した「北九州監禁殺人事件」というのがそれだ。比較的最近の、7人が死んだ大事件であるにもかかわらず、私は全く記憶がなかったのだが、それもそのはずである。事件の詳細があまりにも凄惨であるため、ろくに報道されなかったというのだ。まさに「ウィキペディア」の記事を読んでいるだけでも気がめいってくる。

強烈な読後感を残してくれる小説は、優れた小説である。しかし、本作を人に薦めていいものかどうか──。今ところどころのページを読み返してみるだけでも、気分が悪くなってくるのだ。