最近、全日空機のトラブルや海自ヘリの事故などなどの絡みで航空関係のことを知人と話していて、飛行機についてこんなことも知らないのかと驚かされたり、Twitterをのぞいていてもそんなふうに感じることがあったので、知っておいたほうがいいこと、知っておけばいざというときにパニックにならずに済むようなことを書いておきます。いや、ちゃんと分かっている人のほうが多いのかもしれませんが、分かっていない人もかなりいるようなので。

「航空券」と「搭乗券」は違う

これはちょっと前に、てるみくらぶの騒動があった頃にさかのぼるのですが、「航空券」(チケット)と「搭乗券」(ボーディング・パス)の区別がついていない人がかなりいて、話が通じなくて──本当に話が通じなくて──苛立ったことがあります。ネットで画像検索しても、区別できていない人ばかりで話になりません。ひどいのになると、旅慣れた風情の人がブログやVログで「航空券」と「搭乗券」を区別していなかったりして、「カウンターでチケットを出してチェックインし、チケットをゲットしました」などと聞いていて意味が分かりません。

ざっくり言うと、「航空券」というのは搭乗手続きの際に係員に出すもの(紙だったりスマホ画面だったりする)のことです。「搭乗券」とは搭乗手続きが済んで係員から手渡される、座席番号や搭乗口番号などが書かれたもの(紙だったりスマホ画面だったりする)のことです。

飛行機はエンジンが1基止まったくらいでは墜ちない

たいていの旅客機は左右の主翼にエンジンが1基ずつ付いていますが、片方のエンジンを止めても飛行機は飛び続けることができます。そういう作りになっています。推力のバランスが狂うため機体が多少傾きはするらしいですが、飛べないことはありません。もちろん、エンジン1基だけで飛び続けるのは危なっかしいので、緊急着陸しますけど。

操縦士はエンジン1基だけで離陸することも想定して訓練を積んでいます。離陸滑走の途中でエンジンに問題が発生したとき、早い段階であれば離陸を中止しますが、一定以上の速度に達していると滑走路内で停止することができないため、無理やりにでもいったん離陸しなければなりません。その場合は、問題のあるエンジンを止め、残りのエンジン1基だけで離陸します。

酸素マスクは子供より先に親が自分の分を装着する

機内の気圧が異常に下がると客席上部から自動で酸素マスクが下りてきます。小さい子供を持つ親としては自分より先に子供にマスクを着けさせたくなるのが人情でしょうが、そこはまず親自身が自分のマスクを着けないといけません。というのも、マスクを嫌がる子供に手間取っているうちに、親が酸欠でたおれたら話にならないからです。

酸素マスクは、まず親がすみやかに自分で装着し、それから子供に着けさせます。

救命胴衣は機内でふくらませない

離陸前の案内でも一応ちゃんと言っているのですが、誰も聞いていませんね(笑)

機内で救命胴衣をふくらませると幅を取ってしまい、避難の妨げになる恐れがあります。

また、例えば飛行機が不時着水して、機体が破損して浸水してきた場合、水に潜って破損箇所から外へ脱出しなければならないのですが、先に救命胴衣をふくらませてしまっていると、それのせいで水中に潜ることができず、機外に脱出できなくてそのまま機内の浸水で溺死してしまいます。これは実際にありました。

救命胴衣をふくらませるのは、機外に脱出したあとです。