川崎の民家で若い女性の遺体が見つかった事件で、被害者の親族が、警察にさんざん相談していたのにきちんと対応してもらえなかったという旨のことをマスコミに一方的に言っていて、その話が先行して広まり気味でした。

それに対し神奈川県警が3日、一連の対応についてかなり詳細な説明を行っています。もちろん、その説明はあくまでも警察側によるものであり、警察側の都合で事実の歪曲等が行われている可能性を勘案するのは、まずもって当然のことです。しかしながら、この警察発表に対し被害者親族が「捜査の方法が間違っている」などと反発しているようではあるものの、警察の説明した内容の具体的にどの部分がどう事実と異なるのかを指摘しているふうには見受けられません。

従って、神奈川県警による説明は概ね事実に沿った内容であると十分に推定できます。その前提で改めて警察の説明を読んでみましょう。

率直な感想として、これでもって警察ばかりを厳しく非難するのは酷だと思います。被害届を出したり下げたり、別れたと言ったり復縁したと言ったり、相手に会うなと言われているのに会っていたり、それを半年以上にわたって繰り返されたのでは、警察としては何をどうしようもありません。もちろん、最悪の結果を招いてしまったことについては、警察は今後のための反省材料として重く受け止める必要があるでしょう。しかし、一連の経緯において警察のみに甚だしい非があったと見るのは無理があります。

被害者家族が言うには、いったん出した被害届を取り下げたのは相手から脅されたからだそうですが、そんなことを言われたって、被害届を取り下げられたら警察としてはやれることはかなり限られてしまいます。被害届が取り下げられても警察は相手を追い回せなんて話はめちゃくちゃすぎますよ。

神奈川県警の説明の中にとても象徴的な部分があります。

その後、川崎臨港署の生活安全課員が再度、岡崎さんに電話したところ、岡崎さんは「白井容疑者を、自転車を盗んだことで逮捕してほしい」と申し立てたので、生活安全課員は「今すぐには逮捕できない。事件化するためにも、警察署で事実関係を聞きたい。被害届を提出してもらう必要がある」旨を説明するとともに、白井容疑者に、会ったり、連絡したりしないよう防犯指導をしたところ、岡崎さんは「もういいです」と言って電話を終えている。

「あいつを逮捕して」
「まず署で話を聞かせてください。被害届を出してもらわないと」
「じゃあいいですぅ」

──という流れです。まあ、実際には後日ちゃんと被害届は出したみたいですが。

誰かが警察に「○○氏が私の自転車を盗んだから逮捕してほしい」と電話一本しただけで、警察がただちに○○氏の所へ赴いて逮捕する、なんてことは常識的にあり得ませんし、あったら恐ろしいです。みなさん、この「○○」に自分の名前を入れて考えてみてください。

警察の一連の対応に全く少しも何の問題もなかったとまで言うつもりはありません。しかし、どちらかといえば、明らかに被害者や家族の振る舞いのほうに大きな問題があったと言わざるを得ません。例えば、被害届を取り下げると言われた時、警察はその事由をしっかりと聞き取った上でしかるべき助言をしたほうがよかった(相手から脅迫されているということまで聞き出した上で、新たに脅迫の被害届を出させ、容疑者の身柄を押さえるなどすべきだった)とは思いますが、とはいえ、被害者が被害届を出しては取り下げるを繰り返し、警察の防犯指導もろくに聞かないのでは、事が進まなくなるのも仕方ありません。それをあとから「捜査の方法が間違っている」とか言われても──。

この一連の経緯、ぶっちゃけた話、実態がどうだったのかはともかくとして傍目には、ある種のちょっとアレな男女のもめごとにしか見えないのでは。被害届を出したり下げたり、別れたと言ったり復縁したと言ったり、相手に会うなと言われているのに会っていたりを繰り返していれば、深刻な問題も深刻に見えなくなってしまいます。もしかしたら、被害者本人と家族との間に認識の違いがあって、チグハグなことになってしまったのかもしれませんが。

えっと、あのぉ、何というか、そういう人たちなのかなぁっていう感じがしてなりません。