昨日のNHK大河ドラマ「光る君へ」第12回「思いの果て」は、まるで昭和の終わりごろのトレンディードラマみたいな、まひろ(紫式部)と藤原道長の心すれ違い劇場となっていまして、これは本当に大河ドラマなのかという感じでしたけれども、相変わらずの鬼のように緻密な脚本に驚かされました。

冒頭、藤原為時の妾なつめが残り少ない命というところ、僧侶が読経して得度させるという、本来的な形の枕経の場面から始まりました。曲がりなりにも仏弟子を名のらせていただいている身としては、思わず姿勢を正さないわけにはいきませんでした。僧侶の唱えていた文言を調べてみたところ、浄土宗の「三帰三竟」というものですね。得度のあと、為時がなつめの手を握り「これで、案ずることはない。よかったな」と優しく語りかけるのですが、真宗大谷派において帰敬式を受け法名を名のっている私は「これで、案ずることはない。よかったな」とうなずける生き方をしてきたのか、しているのかと、問われる思いでありました。全く、少女漫画のような物語を展開するくせに、いきなりこんなふうに門徒の頭をガツンやる場面を入れてくるのですから、「光る君へ」は本当にとんでもないドラマですよ。

道長が源倫子と結婚するのは歴史の事実ですが、そこにまひろをどう絡ませてくるかが、この脚本の鬼たるゆえんです。もし道長の北の方となるのが倫子でなかったら、あの時まひろは妾でもいいと言えたのでしょうにねぇ。一方、今のところはまだまひろの婿取りをけしかける役回りの藤原宣孝が、今後どういう形でまひろに思いを寄せるようになるのかという筋書きが、いまだに全く見えませんけど──。

さて、今回も文の判読に挑戦してみました。道長がまひろに送った文、今回は和歌でも漢詩でもなくメモのようなものでした。

○○○○○
一目なりとも
まみえまつらむ
    道長

──という感じで私には1行目が読めませんでした(文字数もよく分かりませんでした)けど、X(Twitter)で得た情報と変体仮名表を参考にしてみると、

今宵たゝ
一目なりとも
まみえまつらむ
    道長

──だったようです。なるほど。