昨日放映されたNHK大河ドラマ「光る君へ」第5話「告白」には、新たな登場人物として藤原道綱母がちょいと顔を見せました(もちろん道綱も)。『蜻蛉日記』の著者として知られますが、私はやはり「百人一首」から知った人物なので、歌人としての印象を強く持っています。

道綱母の姪に当たるのが、そう、『更級日記』で知られる菅原孝標女です。彼女は今回時点ではまだ生まれてもいません(彼女の出生は道綱母の死去の10年以上あとになります)が、数え13歳で上総から京都に戻ってくる頃には紫式部がギリギリ晩年前後というタイミングですから、二人を接触させる脚本は十分にあり得るでしょう。

ところで、藤原忯子が病に伏せりがちなのは帝の寵愛が過ぎるからだ、と内裏の女房たちが噂したりしていましたね。何やら『源氏物語』の桐壺更衣の身の上をちょっと思わせたりも。とはいうものの、いやいや、忯子の場合はもともと病弱なところへ、変態でおなじみの花山天皇が夜な夜な変なプレイをさせるからいけないのでは、と思ったのは私だけではないはずです(笑)。忯子が懐妊しつつ夭折するのは史実ですが、まさか次回あたりで花山天皇が彼女にいけないクスリをキメさせたりする筋書きとか──いや、さすがにないですよね。やはり安倍晴明の呪詛が効いたことにするのでしょう。

今回終盤では、まひろ(紫式部)が胸の内に収めてきたあの悲劇を、ついに藤原道長と共有する運びとなりました。その場となったのが六条で、話の中に呪うだの怨むだのという言葉が入ってくれば、これはもう『源氏物語』の生き霊でおなじみのあのキャラをちょいと連想させるものでもあったりしますが、それよりなによりこの場面で異彩を放っていたのはまひろ役の吉高由里子の演技です。第1回の放映からずっと、彼女の演技のすばらしさはあちこちで賞賛されていましたが、今回の彼女が見せたまひろの泣きの演技は神がかっていたというほかありません。何せ、私はまるで感情移入などしていないにもかかわらず、あれを見ているだけでもらい泣きしそうになりましたから。どうしてもこらえることができずに泣き出してしまう様子、しかも10代半ばの少女の泣きかたを、見事に表現しきっていました。あれ一つを見ても「光る君へ」はすでに大河ドラマ史上最高傑作に決定してかまわないと思います。

さて、次回(第6回)はいよいよ紫式部の宿命のライバルが登場するようで──