新型コロナウイルスが欧米でひどい感染拡大を続けていることの主要因が、彼らの公衆衛生意識の低さにあることは言わずもがなでしょう。しかし、BBCやCNNといった世界に展開するマスメディアの人間ですらそれをきちんと理解することができず、はっきり伝えないがゆえに、欧米人たちの多くはいつまでも勘違いしているのですよね。

もともと彼らは、地球の裏側のアジアとかいう不衛生な地域で新しい病気がはやっているようだ、というぐらいにしか思っていなかったのですよ。ええ、ついひと月ほど前までね。だから、街でアジア人を見かけると「コロナ、近寄らないで!」などと平気で罵り、アジア人と擦れ違うときにセーターの襟を伸ばして口と鼻を覆うという露骨な真似をしてくれたりしたのです。

ところが、イタリアを皮切りに欧米諸国が次々に陥落してゆくと、他人ごとではなくなってきました。そこで自分たちの衛生観念を見直すということになるならよいのですが、そういう発想は出てこないのですね。あの人たちは、あくまでも自分たちは文明的だから清潔であり、不潔なのはアジアやアフリカだと思っているため、自分たちが改めようとは考えないのです。もちろん保健当局や医療関係者などは分かっていますから、きちんと手を洗うようにと啓蒙したりするのですけど、その他大勢は上から下までそういう意識を持ちません。握手の代わりにエルボー・バンプをしようなどと思いついたりはするものの、ちゃんと手を洗うという基本の重要性が認識されないのです。

データを見れば、今のところ日本が感染拡大をそこそこ抑えることに成功していることが分かるのですが、それでも欧米人は日本を参考にしようとは考えません。日本だけが感染を抑えることができているなんておかしい、何かズルをしているに違いない、五輪のために事実を隠蔽しているに違いない、ほらほら検査数が少ないじゃないか、などと考えるわけです。だから改善に向かいません。もちろん保健当局や医療関係者などは分かっていますから、例えばウイルス検査にしてもやたらにやればいいのではなく、日本方式がよいのだと理解していますけど、マスメディアや政治家がそれを理解できないので方向が狂います。

強いていえば、もともと日本人にマスクをする人が多いことを馬鹿にしていた欧米人が、昨今は競ってマスクをつけるようになったという変化には、いささか驚いてはいます。とはいえ、街でアジア人が殴られて「マスクはどこ? このコロナウイルス」と罵られたりもするということで、やはり根本的に何も変わっていないなと思います。

ついでに、日本のチシキジンも欧米の報道論調に乗っかるのが知的でかっこいいと勘違いしていたりして、筋違いの日本政府批判を始めるのですよね。笑ってしまうしかないのですが。

欧米諸国では次々に外出禁止令が出ています。日本の週末外出自粛要請みたいな生ぬるいものではありませんよ。何せ警察が取り締まっていますからね。そんなすごいことをやらなくても、公衆衛生さえしっかりしていれば、満員の通勤電車でも感染爆発を招かずに済むはずなのですが。

ということで、われわれはしっかり手を洗っていきましょう。