17年前、衆院選を控えた時期に、森首相(当時)が遊説先で、無党派層は寝ていてくれればよいとの旨の発言をした時、報道媒体は失言だ失言だとうるさかったものである。

今回の衆院選を前にして、今度はいわゆる左派の者たちが「自民党に投票するような馬鹿は棄権しろ」などと言いだした。それも、17年前の森氏の発言が冗談・軽口のたぐいであったのと違い、このたび彼らは真面目に“説教”していたのだから、よほどたちが悪い。ところが、彼らの“失言”を問題視する報道媒体はほとんどなかった。

折しも台風が列島を直撃していたこともあり、投票率は低くなった。これで、例の彼らの思惑通り、自民党は敗れるはずだった。

ところが、ふたを開けてみれば自民党の勢力は選挙前と変わらなかった。すると、例の彼らはこう言いだした:「このような低投票率の選挙は民意を反映しているとは言いがたい」─。投票に行くなと言っていたのは君らではなかったのか。

報道媒体も負けてはいない。自民党が好調の中、世論調査等を引き合いに出し、確かに自民党は選挙に勝ったが安倍首相は世論の半数以上から信頼されていない、などと書き立てる。

まあ、確かにそうかもしれない。安倍首相の信頼は高くはないのかもしれない。とはいえ、首相の信頼度が下がった原因というのが、例のモリカケ問題とかいう何が問題なのかさっぱり分からない井戸端会議以下のどうでもいいネタなのだから、アホらしくなってくる。

だいたい、信頼されていないという安倍首相以上に野党のほうがよほど信頼されていないというのが、今回の選挙結果ではないのか。なぜ野党がそこまで信頼されないのか、その理由の一端を知りたければ、本稿を最初から読み返してみればよい。

自分らと意見の違う者は選挙に行くななどと言う。そんなのは民主主義の敵としか言いようがない。民主主義の敵が推す政党を大衆が支持するなどあり得ない。