小泉徳宏監督『ちはやふる 下の句』 日本、2016年

〔2016年5月8日(日)鑑賞〕

都立瑞沢高校かるた部が都大会優勝を果たすまでをたどる「上の句」に続き、千早と太一が新と再会するところから全国大会までの様子を描く。

「上の句」に対して「下の句」であるから前後篇の後篇に当たるわけだが、さらなる続篇の制作がすでに発表されていることからも分かるように、事実上本作は前中後篇の中篇とも位置付けられる。どんなシリーズでも中篇は前後の“つなぎ”にしかならないため、どうしてもそれだけで一つの作品としての完成度が下がりがちであるのは仕方がない。

「上の句」が疾走感にあふれていたのに比べると、テンポがいささか悪いという感は否めない。これはストーリーの構成からしてやむを得ないことではあるが、映画版ならではの工夫というものを見せてほしかった気もする。

「上の句」と同様、そこでその一首を織り込んできたかと思わずひざをたたきたくなるような「百人一首」の使い方は、なかなかいい。特に、クイーンの詩暢から千早が初めて奪う札は、やはりあれでなくてはいけないのだ。

そして、やはりその詩暢がこの「下の句」の要である。制服姿で颯爽と登場するクール・ビューティーだが、打って変わって私服のセンスがどうしようもなくダサいというところ、原作読者の期待を裏切らない。まさに“無駄美人”の千早に対抗(?)するキャラだ。ひとたび畳の上に座るやクイーンの風格を見せ、他の追随を許さない超絶的な「音のしないかるた」を披露する。

さて、せっかく登場した詩暢であるが、本作ではあまり出番がなかった。とはいえ、続篇で見られるであろうクイーン戦に期待がふくらむばかりである。チームの中で育ってきた千早と、孤高のかるた師である詩暢は、クイーン戦でどんな札取りを見せてくれるのであろうか。

推奨度: 65点(/100)