ネットではそこそこ話題になっているものの、その性質ゆえに新聞もテレビもなかなか取り上げないのが、このほど国会で可決・成立したいわゆる「AV新法」だが、はっきりいって天下の悪法である。

この法律の問題点をざっくり簡単にまとめると、〈18歳が成人年齢になったのに伴い、まだ世間知らずの18、19の女性が悪質な業者にだまされてAV出演を強要されたりしないよう、彼女らを守る〉という建前で作られたはずの法律で、その趣旨であれば良いのだけれども、実際に出来上がってみたら、元から遵法意識などない悪質な業者には痛くもかゆくもない規制である一方、適正にAV事業を運営している業者やそこに関わる女優たちをやたら締め上げる効果ばかりの、そもそも業界の意見など聞かないで極めて異例の短期間で作られ施行された法律、というところである。事実、この法律に一番怒っているのは、この夏から新作の仕事が途絶えてしまっている現役AV女優たちだ。

私が以前からしばしば言及している児童ポルノ禁止法の問題と似ている。自分は児童ポルノを好む性癖などないからとか、どうせ困るのはAV関係者やAV好きの連中だけだとか、いかがわしいからつぶれてしまったほうがよい業界だとか、そんなふうに他人ごととして傍観してはいけない。〈彼ら〉は、いずれあなたの首を絞めにやって来る。

ナチスが最初、共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義者ではなかったから。
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。
そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰ひとり残っていなかった。
[マルティン・ニーメラー]