ネットでの情報流通の形態が変わるにつれ、とりわけSNSというものが普及してくると、本来ネット・ユーザが当然わきまえていたはずのリテラシーを欠いた人々も多くネットに流入してきて、彼らが無用の混乱を生じさせることがあるというのが実情である。

ふだんならさほど大きな問題にはならないようなことであっても、現在進行中の熊本地震のような災害に際しては、深刻な混乱を招くことになりかねない。多くの人々はそのことを、5年前の東日本大震災において学習したと思うが、頭のよろしくない人はすっかり忘れてしまっているようである。

ということで、悪い実例を挙げよう。

実際はこのあとに他地区の給水所を同様に列記したツイートがいくつか続く。このようなものを見て、有用な情報発信だと評価してしまうような人は、よくよく気をつけたほうがよい。これはSNSの誤った使い方の典型例である。

熊本市のホームページより(16日18時現在)

上記ツイートの内容は、実は熊本市のホームページに16日現在掲載されている「緊急情報」をコピペして体裁を多少整えただけのものだ。「だったら、熊本市のホームページにリンクするだけでいいんじゃん。そのほうが簡潔だし正確だし。わざわざテキストを打ち直してツイートしたら間違いの元だし。こういうのがたくさんネットに飛び交って、時系列もよく分からない状態だと、それが最新の正しい情報なのかどうかも分からなくなるし」と思ったあなたは、正解である。そう、その通りなのだ。

「緊急情報」を書き写してツイートしてくれたほうが、見るほうはわざわざサイトを見る手間が省けるから、親切なのでは?

否である。熊本市の「緊急情報」は随時更新される。誤りがあれば訂正される。しかし、ツイートはそれを投稿したユーザが自分で削除しない限り、古いまま誤ったままでいつまでもネットを流通し続ける。「緊急情報」は常に最新の状態で参照されなければならないのである。

別に本人は悪気があってやっているわけではないだろうし、被災者の方たちのために良かれと思ってやっているんだろうから、そう無下に否定すべきではないのでは?

否である。善意からであろうが悪意からであろうが、その行為によって情報の混乱が起きるのであれば結果の評価は同じだ。現地にいる人が現地で得た情報をそのままツイートしたという事情であれば話は分からなくもないが、例挙したツイートの投稿者についていうと、沖縄在住であり、熊本の被災地の人と連絡を取り合っているでもなく、ただパソコンの前に座って熊本市のホームページからテキトーにイーカゲンにコピペしてツイートしているだけなので、無益どころかむしろ害をもたらし得る。

この際だからはっきり言ってしまうが、こういう非常時の情報をわざわざ“自分の言葉”にして発信しないと気が済まないような人は、自己承認欲求過剰でないとすれば単なる馬鹿だと思う。

報道機関などのアカウントであれば、常に新しい情報を収集・編集して配信することが可能であろう。しかし、個人ユーザが24時間体制で報道機関の真似事をすることなどできるはずもないから、個人の分際でマスコミごっこなどやってはいけない。

熊本市長の大西氏によるこのツイートは良い実例である。こういうやり方をするか、もしくはこういうツイートをそのままリツイートするというのが、今のような非常時には最も適切な方法だ。

もちろん、物事には時と場合というものがあるので、必ずこうしなければいけないと言うつもりもない。ただ、非常時にネット空間を流通する情報をどう整理するか、無用の混乱を引き起こさないようにするためにはどういう心がけが必要かということは、ユーザひとりひとりがわきまえておかなければならない基本である。

まだ納得がいかないという人のために、最後にとどめを刺しておこう。

「自衛隊は支援物資を受け付けています。県庁が窓口です」

震災[東日本大震災]翌日の[2011年3月]12日朝、関東に住む20代の会社員男性は自宅でブログにそう書き込んだ。

自衛隊員を家族に持つ知人がいた。11日夜、「個人で支援物資は送れる? 確認できたら教えて」とメールを送ると、「各自治体で受け付けている」と返信があったからだ。

「役立つ情報を出したい」という一心だった。普段は数十の訪問者数が2万超に膨れあがった。ツイッターでも発信した。

2時間後、ツイッター上で「これは公式発表ですか?」と指摘を受けた。県庁に確認の電話を入れると「受け付けていない」。「まずい」とブログを訂正したが、情報はあちこちに転載されていた。

同様の情報はチェーンメールでも広がっていた。埼玉県では「物資を送る」という電話が1日100件近く殺到し、国との連絡にも使う災害対策本部の電話回線4本がふさがった。被災地・宮城などいくつもの県が「そんな事実はない」と発表に追われた。

男性のブログには「役所の仕事を邪魔するな」と非難が押し寄せた。知人に「隊員本人に確認したのか」とメールを送ると、返信があった。

「ネットで見た」