投稿内容におかしな規制がかかることでおなじみのSNSといえばFacebookですが、Twitterもちょっとおかしなことを始めるみたいです。まあ、TwitterのほうがやろうとしているのはFacebookのように投稿への規制ではなく、技術者が使う用語についての内規みたいなものなので、ユーザへの影響はないのですが。

包括言語 (inclusive language) という概念を知っていますか。

例えば「実業家」を英語でもともと “businessman” といいますが、 “-man” は男性ですので、女性の社会進出が進んでの女性の実業家が現れたら “businesswoman” と言い替える場面が出てきました。となると、男女平等に配慮して “businessman/businesswoman” と併記するようになります。しかしこれでも、男性 (-man) が先に表記されるのはおかしいという話になります。では、女性 (-woman) を先にすれば解決するのかというと、そういう問題でもないのですね。そこで “-man” “-woman” の部分を “-person” で統一して “businessperson” と表現するようになりました。日本語のカタカナ語でも、最近は「ビジネスマン」ではなく「ビジネスパーソン」とする例が増えてきました。

このように性差をなくした表現を、包括言語といいます。今では性別だけでなく、人種、民族、宗教などに関しても公正・中立な表現を使用することを指します。

──ええ、そうです、このごろすっかり印象の悪くなっているポリティカル・コレクトネス(political correctness、政治的な正確さ、俗に略して「ポリコレ」) というやつですよ。

もちろん、公の場で用いられる言語表現は、ある程度の政治的な正確さを備えた包括言語であるべきだという考えに、私は反対しません。ところが、近ごろはその動きが変に暴走しているのですよね。特に今は、アメリカ発の Black Lives Matter の運動なんかもありまして、Twitterも迎合して技術者が使う用語を正しい言語すなわち包括言語に置き換えようと動いているらしいです。

左カラムがよろしくない表現、右カラムが言い替えとしての正しい表現すなわち包括言語だそうです。つまり “whitelist”(ホワイトリスト) “blacklist”(ブラックリスト)はポリコレ的によろしくないので、 “allowlist”(許可リスト) “denylist”(拒否リスト)と言おう、と。いわば「黒歴史」という言い方は黒人差別になるので「恥ずかしい過去」と言いましょうね、みたいな話なのですが、考えている本人たちは大真面目なのだと思います。

それでもそのへんはまだマシで、3番目あたりから頭の中に「?」が増えてゆき、最後の "dummy value" に至っては訳が分かりません。