典型的なフェイク・ニュースです。この件はアメリカでも日本でも一部を除くマスメディアに同じような報道のされ方をしているので、アメリカでも日本でも事実にアクセスできる人たちはみんな呆れています。

まず、〈みんな仲良く中流意識〉の日本に生まれ住んでいるとなかなかピンとこない話なので、背景となる基本事情から説明します。

洋の東西を問わず日本以外の多くの国には、高所得者用の住宅団地があることが珍しくありません。たとえていうと、田園調布みたいな屋敷町(というかもっと豪華な邸宅だらけの)があり、その全体がいわば田園調布団地であって、敷地が田園調布団地開発会社の私有地となっている感じです。団地の周囲は塀などで守られており、敷地入り口にはしっかりと門があります。もちろん、配達業者や来客などを除いて住民以外は立ち入り禁止です(私有地ですから)。物騒な国や土地の場合、ライフルを携えた守衛がいたりします。

上掲のニュースのセントルイスの件では、デモ隊が入り込んでいるのはそうした高級団地の敷地内です。もはや入ってきた時点で警察沙汰ですよ。なんでもこの団地の奥に市長の自宅があるそうで、デモ隊はそこへ向かっていたとのことですが、言い訳になりません。市や市長への抗議なら市庁舎前でやるのが筋であり、市長の私宅へ不法侵入を犯してまで押しかけてよい理由はありません。

また、この手の報道では盛んにナントカの一つ覚えで「平和的なデモ」という表現がなされますが、目下の Black Lives Matter の運動が必ずしも「平和的」といえないどころかむしろ暴力的であることも多いのは、事実にアクセスしている人たちならばよく分かっていることです。あのような破壊集団が自宅の周辺に現れたときの恐怖は、想像するに余りあります。

ちなみに、この団地の場所はすでに特定されており、ポートランド・プレイスという街区のようです。「Googleストリートビュー」に写っている門の画像を引き伸ばしてみますと──

「Googleストリートビュー」

“PRIVATE STREET / No Outlet” (私道 / この先行き止まり)とありますね。日本みたいに生ぬるい国ならいいですが、そうでない国の場合、用のない奴がこんな所へノコノコと入り込めば、射殺されても仕方がありません。

ということで、銃の話にいきます。「平和的」なデモ隊に対して銃で威嚇するとは何ごとか、と暗に批判を込めて報道する媒体が多いのですが、アメリカの国柄と、目下のBLM(の一部)の暴力性に鑑みた場合、自宅の至近にデモ隊が見えればこうして銃で威嚇するのは、別におかしいこととは思えません。むしろ、この夫妻が威嚇射撃すらせず、ただデモ隊に銃口を向けるだけにとどめたのは、穏便とさえ思えます。

さらに、他媒体の報道などからすると、この夫妻は、飼い犬もろとも殺してやるなどとデモ隊から脅されたと主張しています。至近から殺してやると脅されたのです。しかも、実際に全米各地で暴動を起こしているならず者の仲間とおぼしき多数の連中から、至近で。