4月15日は、僕の86回目の誕生日である。
このような「戦時下」で迎えるとは、
思いもしなかった。
この戦争は敵の見えない、
困難な闘いである。
ただ、僕が子どもの頃体験した、
あの戦争との大きな違いがある。
国と国、人間と人間が闘っているわけではない。
世界の多くの国々が、
ウイルスという敵と共闘しているのだ。

私も、あの祝賀ムードと大型連休の令和改元から1年目を、このような「戦時下」で迎えるとは思いもしなかった。

そして天皇陛下のおかれても、御即位1周年がよもやこのような「戦時下」になろうとはお思いにならなかったであろう。

昭和天皇が第二次世界大戦と関わったのは即位から10年以上を経てからであったし、即位前の皇太子時代には摂政を務めていた期間もあった。戦時中に少年期を送られた上皇陛下が、阪神淡路大震災に遭遇されたのは、天皇御即位から6年後のことであったし、東日本大震災に際して国民へのお言葉を述べられたのは9年前である。それらを踏まえると、有事を体験されたことがなく、御即位から1年が立たないうちに「戦時」を迎えられた今上陛下には、この荷はいかほどのものであろうかとお察し申し上げるに余りある。

この3カ月で、世界は変わってしまった。

3カ月前までは、その気になれば、金と時間さえあれば、地球の裏側へ旅行することもできた。しかし今は、埼玉県外へ出ないでくれと知事から頼まれている状態である。うちから車でほんの1時間もかからない東京や千葉へ行かないでくれと言われている。こんな事態はSFの中でしかあり得ないはずだった。

この先、物事がどう進んでゆくのか、そして〈コロナ禍後〉にどんな景色が待っているのか、まるで見えない。けれども、どんな闇の中でも、足もとの大地はしっかり確かめてゆきたい。