スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督『ブリッジ・オブ・スパイ』 (Bridge of Spies) アメリカ、2015年

〔2016年1月10日(日)鑑賞〕

1962年にアメリカと旧ソ連の間で行われたスパイ交換の舞台裏を描く。

題名にある「ブリッジ」とはベルリンのグリーニッケ橋のことで、スパイ交換の名所らしい。旧東西ベルリン間ではなく、西ベルリン西部国境(当時)にかかる橋である。

本作は、過剰さがなく抑制された作り方になっていることで、大いに魅力を醸し出しているのではないだろうか。ソ連スパイのアベルはいかにもスパイというふうではないし、彼の弁護を担当するドノヴァンはいかにも法律家というふうではない。

怖くはないのか、不安ではないのか、とドノヴァンが訊くたびに、飄々としてただ “Would it help?” (それが何の役に立つ?) と返すアベルは、スパイ犯罪者というよりはまさに冷戦という“戦争”における一兵士であり、さながら胆のすわった武士である。ドノヴァンが、敵国スパイを弁護することにより同胞すべてから憎悪の目で見られることになろうとも、弁護士としての本分を尽くしてゆくのは、やはりアベルの覚悟に感じるところがあってのことなのだろう。

そして、そこに余計な解説を付けないのがスピルバーグ監督の作法だ。アベルが静かに言う “standing man” (不屈の男) という言葉だけで十分なのである。

推奨度: 80点(/100)