テクスト: 沢村鐵『フェイスレス 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』 東京、中央公論新社、2013年。

〔2015年12月21日(月)読了〕

「フェイスレス」というカタカナの文字列を見てすぐに “faithless” だと思ったのだが、よくよく見たらカバーに “Faceless” と書き添えられていたのだった。

ある大学で爆弾事件が起き、教授1人が犠牲になる。その犯人らしき者の姿を、ある講師が至近距離で目撃していた。しかし、目撃者には先天的な障害があった。相貌失認──人の顔を覚えられない、判別できないのである。

その後も爆弾事件や未遂事件が続く。犯行声明を出したのは「C」と自称するハッカーだった。

実行犯の唯一の目撃者が相貌失認であり、主犯はハッカーということで、二重の意味での “faceless” である。

話の壮大さに比べて、要素の掘り下げ方がいちいちちょっと浅い感じがする。外国の工作員が登場したりする割には、その工作員が日本で具体的にどんな活動をしていたのかも書かれていない。シリーズものの1作目であるから、順に読んでゆくうちに深まってゆくのかもしれないけれど。

また、ネットという要素を取り入れた小説を読むたびに思うのだが、ネットについての作者の知識が甘すぎる場合が多い。私が読んだ中では、ネットについてまともに書けていたのは『サイバー・コマンドー』ぐらいしか思いつかない。あとは、ネットというよりコンピュータ・システム全般を題材にしたものとして『パニックY2K』とか(実際には起こり得ないパニックの恐怖を煽りに煽っただけの小説だったけれど)。小説家諸氏は安易にネットとかハッカーとかに手を出さないほうが無難だと思う。

本作についても「え、警察庁のサイバーフォースにいたという刑事が、その程度なんですか?」という感想は否めない。物語としてのおもしろさは高いから、ハッカーを絡ませたいのであれば、その方面についてよく調べてから書いてほしかった。