これまでも北朝鮮が植民地支配の賠償とやらを言ってきたことはあったが、目下のところ韓国があんなふうでもあるため、今後は北が便乗してうるさく言ってくることが増えるかもしれない。

日韓併合(朝鮮併合)時代の戦後清算については、歴史の授業できちんと教えられていないせいで、基本的なことを知らない人が多いようだ。嘘つきで約束を守らない国として世界におなじみの韓国政府および北朝鮮、ならびに築地媒体などにだまされることのないよう、きちんと事実を押さえておこう。

日韓基本条約第3条において、日本および韓国は、韓国が「朝鮮にある唯一の合法的な政府」であることを確認している:

大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。

つまり、日韓基本条約やその付随協約である日韓請求権協定(に限らず日韓間のあらゆる条約・協約)は、「朝鮮にある唯一の合法的な政府」は韓国であるという前提で結ばれている。どういうことかというと、日韓請求権協定によって日本が「朝鮮にある唯一の合法的な政府」である韓国に対して行った有償無償の莫大な額の援助には、韓国が北朝鮮に対して分け与えるべき分も含まれていたということだ。その援助がなされるとともに日韓間の請求問題も「完全かつ最終的に解決された」(同協定第2条)ので、昨今話題の韓国の自称元徴用工の個人請求などに日本側が応じる必要は全くないのであるが、同時に、北朝鮮からの請求にも日本は応じる必要はないのである。

もし北朝鮮が植民地支配の賠償とやらを求めてきても、日本としては「韓国にまとめて払ってあるから韓国に請求してね」と応じてよい。もちろん北朝鮮としては聞いていない話だから素直に聞き入れがたいかもしれないが、日韓の取り決めとしてこういう場合は「朝鮮にある唯一の合法的な政府」である韓国が北朝鮮の請求に対処するのが筋なので、原則論としては、日本は「そのへんのことについては、韓国が北朝鮮の面倒をみてやってね」と韓国にまるまる話を振るのが当然なのである。もっとも、国際社会による北朝鮮への制裁が続けられている今は無理だから、将来の話ということにはなるが。

このことは、核問題や拉致問題以前の、日本が朝鮮半島に関わる際の基本中の基本として押さえておかなければならない。