是枝裕和監督『万引き家族』 日本、2018年

〔2018年6月19日(火)鑑賞〕

※注意: 本記事はネタバレを含みます。

カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作品である。

是枝監督作品で過去にカンヌで受賞したものといえば『誰も知らない』(最優秀主演男優賞/柳楽優弥)と『そして父になる』(審査員賞、エキュメニカル賞特別表彰)であるが、どちらも私の好きなタイプの映画ではない(出来栄えが良いか悪いかではなくあくまでも私の好き嫌いの話)から、本作に対しても期待値は高くなく、ただ松岡茉優が助演しているというだけの理由で見に行った。

一言でいえば、良くも悪くも〈カンヌ受け〉する作品であった。

筋書きは最初から大方察しがついているので、ストーリーを楽しむことは全くできないから、あとは作り込みがどういうものかということになってくる。撮り方としては、とてもうまく撮れていると思う。なるほどこれはパルムドールにふさわしい。台詞回しがよくなじんでいるのもかなりいい。出演者たちの演技、とりわけ安藤サクラ(柴田信代役)の仕事ぶりは、是枝監督のパルムドールとは別に女優賞が贈られてもいいくらいだ。また、家族とは何かという問いを観客に突きつけ、安易な答えを提示しないところ、こういう社会派の映画にありがちな嫌らしさがなくて好感が持てる。

しかし、やはりどこか、いわば感動ポルノの亜種のような臭いが漂う。あるいは私が〈潮騒型ステレオタイプ〉と呼ぶものにも近いかもしれない。このようなテーマの映画において、題材が貧困層である必要はあるのだろうか。虐待されている幼児を救い出すのが〈犯罪者だけれども心優しい貧乏人〉であるというところですでに思考の限界が見えている。

老女の年金を当てに集まった貧しい人々が肩を寄せ合いながら窃盗で生計を立てる擬似家族──ああ、これっていかにも国内国外のブンカジンが好んで消費する話だ、という感じがしてため息が出てくる。さらにそこへ持ってきて、夕立から男女の絡みへの流れなど、もう雨の一滴目の音が聞こえた時点で想像がついてしまい、ああ、これっていかにも西洋人の好きそうなベタなやつだ、という感じがして本当にため息をついた。

初めからいろいろ言いたい部分はあるのだが、終盤で一家が捕まったあとは特によろしくない。実際にこういうことになったら、そういうふうには進まないだろうという形で思いっきり進展するので、強引さが拭えない。ツッコミどころだらけなのだ。信代だけが収監されて済むとか、ゆりがそのまま虐待親の元へ戻されるとか、そんなのはあり得ないことであって、この筋書きを考えた人は社会のしくみを知らないのではないかという気がしてくる。もっとも、治と翔太の場面がうまい締めになっているのはとても良い。

ところで、どうでもいい話だが、こういう世界的に有名な賞を取った映画は、観客が年寄りだらけである。

推奨度: 50点(/100)