東路の道の果てよりも

十九. 紅葉

いづこにもおとらじ物をわがやどの世を秋はつるけしき許は
更新履歴: 平成20年1月3日

原文

あしがらといひし山のふもとに、くらがりわたりたりし木のやうに、しげれる所なれば、十月許の紅葉、よもの山辺よりもけにいみじくおもしろく、にしきをひけるやうなるに、ほかよりきたる人の、

「今まゐりつるみちに、もみぢのいとおもしろき所のありつる」

といふに、ふと、

いづこにもおとらじ物をわがやどの世を秋はつるけしき許は

現代語訳

我が家の庭は、足柄という山の麓に広がっていた暗がりのように木々が茂っている所なので、10月ごろの紅葉は、都の四方の山辺の紅葉よりもいっそう素敵で、錦を広げたような眺めだ。

そこへよそからやって来た人が、

「今参りました道の途中に、紅葉のとても素敵な場所がありましたの」

と言うものだから、ふと、

どこにも劣らないでしょうに。世間に飽きて世間を離れた我が家の、秋の終わりの景色だけは。